難問をあえて解かせる(間違い稽古のすすめ)
※埼玉県の公立入試は、今年から大きく変わるという意味で象徴的なのが『学校選択』問題と言われる制度です。かんたんに言うと偏差値60を超えるような一部の学校では、従来の入試では差がつかなくなってきているため、問題の難易度を上げてできる生徒とできない生徒をふるいにかけるというものです。それと理科、社会の問題も従来の45分→50分に変更されたため、おそらく問題にも影響が出るとされています。
仮に去年まで使っていた従来の模擬試験をAタイプ、今年『学校選択問題』を見据えた難易度を上げた模擬試験をBタイプとします。去年まではAタイプのものを6回実施していたのですが、今年はAタイプのものを3回、Bタイプのものを3回実施する運びになりました。
ここで、気をつけなければならないのは、うちの塾には学校選択問題を採用しない学校を受験する子もいるということです(むしろそっちの方が多いかもしれない。)つまり、旧来の試験が難しいとされ、学校選択問題を採用しない学校は難易度が自然と下がることが必然的に予想できるのですが、それでもあえて難問を解かせるのは意義があることだと思います。以下、研修でも扱ったのですが、とあるブログから引用させてもらいます。
歌舞伎の世界には「間違い稽古」という言葉がある。人は間違いをするものだから、間違いをしないように訓練するだけでなく、間違ったときに芝居の流れを壊さないように、間違いをした後の処理をあらかじめ練習しておくのだそうだ。さすが歴史のある伝統芸能は奥が深い。「人間」というものを分かっている。
「ミス」は「失敗」は起こりうるものだという視点からの指導はとても大切だ。伝統芸能に学んでおきたい。中学生はまだ精神的に幼いので、我々大人より緊張やパニックに弱い。そこを考慮し、できるだけ緊張やパニックに強くしておく訓練も積ませておきたい。試験当日に受けてしまう、いつもと違った「違和感」と戦わせておくのである。私はそういう訓練の一環として、受験直前に、受ける学校と傾向の違う問題をやらせることにしている。傾向の違う問題だけではなく、難易度もとびっきり高い問題の方が効果が高い。とびっきりというのはどれくらいかというと、偏差値55の学校を受ける子に偏差値70の学校の問題をやらせるのである。馬鹿げていると思われるかもしれない。でも私はこれをとても効果が高い訓練だと思っている。
本番で失敗しやすいタイプは、受験する学校に対して学力の余裕がない子と、几帳面な子に多い。私の経験では圧倒的に女子が多い。気合や真面目さが裏目に出るのだろう。そこで生徒たちに、めちゃくちゃに難しい、そういう問題をやらせてみる。はっきりいって手も足も出ない。それでも、取れるところを探し出し、1点でも多く取れるよう四苦八苦させるのである。たいてい弱気な子と真面目な子がまずこれを拒絶する。潜在意識が思いっきり拒否するのだろう。しかしこれは拒絶する子ほどやらせておきたい訓練だ。何回もやらせるわけではないが、こういう訓練をしておくと、傾向が変わっても、当日パニックになっても、リカバーしやすい。
「あのねえ、こういう訓練をしておくと当日失敗することが減って、パニックにならないんだよ」という指導者の「暗示」も含めて、直前の「対策」としては不可欠の訓練だと私は考えている。
やはりBタイプの問題の1回目は、ほとんどの生徒が数学で壊滅的な点数を取った。過去問をしっかり勉強していたとしても、大問1から私立高校にみられるような複雑な計算が出てきたような時点でびっくりしていたのではないかと思う。それからおそらくその結果を引きずったまま他教科に影響がみられたのも確かです。埼玉の入試の順番は国語→数学→社会→理科→英語という順番で解くため、B問題に初めて対処したとき、おそらく数学がとてつもなく難易度が高く、全然できなかったという子がほとんどで、その影響を少なくとも後の教科にも引きずっていた子が多かった。
数学、英語はその日のうち解説の授業を実施しているのだが、数学は主にN先生。英語の解説授業は俺が受け持っている。Bタイプの問題は本当に難しいので、従来のものに比べると平均点が格段に落ちる。リスニングに10分が割かれ、残りの40分で長文を2題も解かなければいけないので、結構点数を取るのが難しい試験になっている。それでも、しっかり点を取れるところはどこか、考えてほしい。
いま、担当している生徒の英語はひたすら過去問を解かせていましたが、もうそろそろ埼玉特有の県立長文にも慣れてきたころだから、そろそろ私立のおもいっきり難しい問題をやれせてみるのもいいかもしれない。少なくとも、去年は早稲田大学の入試で『傾向が変わってしまった』という受験生の悲痛な叫びを聞いて、過去問ばかりをやらせれないいというものではないという自身への反省も込めている。本番に強くなるには、こういうことを積み重ねていかなければならないと感じるようになった。
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