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野球好き塾講師のブログ

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TOEICの勉強や西武ライオンズの雑感とか

塾講7不思議その5 国語の教科書だけでは実力がつかないという命題について

今年度は、担当する生徒の国語の先生が頻繁に代わっている。今年はS中の中3と、M中の中2。で、もうすぐS中の中間テストが近いので、教え子の子がテストに関する情報として

国語の教科書だけでは実力がつかないから初見の読解問題を出すよ。という話を聞いて、そこで、何だか赤で強調したことが妙に気になってしまった。というのも先日、学年トップを目指すSさんとの授業で小説を一緒にやった、ネットの中に落ちていた『アイスプラネット』の問題から引用させてもらう

翌日、学校に行く途中で、同じクラスの吉井と今村に会った。①初めはどうしようかと思ったけど、馬も飲んでしまうでっかいアナコンダや、三メートルもあるナマズの話はおもしろかったし、氷の惑星の話も、本当だったらきれいだろうなと思ったから、②つい吉井や今村にその話をしてしまった。二人は僕の話が終わると顔を見合わせて、「ありえねえ。」「証拠見せろよ。」と言った。「そんなほら話、小学生でも信じないぞ。」そう言われればそうだ。だから、部活が終わって大急ぎで家に帰ると、僕は真っ先にぐうちゃんの部屋に行って、「昨日の話、本当なら証拠の写真を見せろよ。」と A無愛想に言った。ぐうちゃんは少し考えるしぐさをして、「そうだなあ。」と言って、目をパチパチさせている。
③「これまで撮ってきた写真をそろそろちゃんと整理して紙焼きにしないと、と思っているんだ。そうしたらいろいろ見せてあげるよ。
 むっとした。そんな言い逃れをするぐうちゃんは好きではない。なんかぐうちゃんに僕の人生が全面的にからかわれた感じだ。吉井や今村に話をした分だけ損をした。いや失敗した。 ④僕までほら吹きになってしまったのだ
 それから夏休みになってすぐ、ぐうちゃんはいつもより少し長い仕事に出た。関東地方の各地の川の測量をするということだった。僕は人生を全面的にからかわれて以来、あまりぐうちゃんの部屋に行かなくなっていたから、気にも留めなかった。
 夏休みも終わり近く、いつものように週末に帰ってきた父と母が話しているのが、風呂場にいる僕の耳にも入ってきた。
「僕たちは、都市のビルの中にいるからなかなか気がつかないけど、由起夫君は若いころに世界のあちこちへ行っていたから、日本の中にいたら気がつかないことがいっぱい見えているんだろうね。なんだかうらやましいような気がするな。」
 母は、珍しくビールでも飲んだらしく、いつもよりもっと強烈に 雄弁になっている。
「あなたは何をのんきなことを言っているの。由起夫が、いつまでもああやって 気ままな 暮らしをしているのを見ていると、悠太に悪い影響が出ないか心配でしかたがないのよ。例えば極端な話、大人になっても毎日働かなくてもいいんだ、なんて思って勉強の意欲をなくしていったとしたら、どう責任取ってくれるのかしら。」
 父が何かを答えているようだったが、はっきりとは聞こえなかった。ただ、僕のことでぐうちゃんが責められるのは少し違う気がする。そう思うと、電気の消えたぐうちゃんの部屋が急に寂しく感じられてきた。
 

それから、ぐうちゃんがまた僕の家に帰ってきたのは、九月の新学期が始まってしばらくしたころだった。顔と手足が真っ黒になっていて、パンツ一つになると、どうしても笑いたくなって困った。

 残暑が厳しい日だった。久しぶりにぐうちゃんのほら話を聞きたいと思った。またからかわれてもいい。暑いから、今度は寒い国の話が聞きたい感じだ。

 ところが、ぐうちゃんの話は、でっかい動物のでも、暑い国のでも、寒い国の話でもなかった。

「旅費がたまったから、これからまた外国をふらふらしてくるよ。」

 ぐうちゃんは突然そう言った。「でもまあもう少し。」にはこんな意味があったのか。ぐうちゃんはいつもと変わらずに話を続けている。それなのに、ぐうちゃんの声はどんどん遠くなっていく。気がつくと、僕はぶっきらぼうに言っていた。

「勝手に行けばいいじゃないか。」

 ぐうちゃんは、そのとき ⑥ちょっと驚いた表情をした。何かを話しかけようとするぐうちゃんを残して僕は部屋を出た。

 それ以来、僕は二度とぐうちゃんの部屋には行かなかった。母は、そんな僕たちに、あきれたり慌てたりしていたけれど、父はなにも言わなかった。

 十月の初めに、ぐうちゃんは小さな旅じたくをして「Dいそうろう」を卒業してしまった。

 出発の日、僕は、なんて言っていいのかわからないままぐうちゃんの前に立っていた。ぐうちゃんは僕に近づき、あの表情で笑った。そして、なにも言わずに僕の手を握りしめ、力のこもった強い握手をして、大股で僕の家を出ていった。

⑦「ほらばっかりだったじゃないか。

「いそうろう」がいなくなってしまった部屋の前で、僕はそう思った。

 

 ぐうちゃんから外国のちょっとしゃれたふうとうで僕に手紙が届いたのは、それから四か月ぐらいたってからだった。珍しい切手がいっぱいはってあった。

「あのときの話の続きだ。以前若いころに、北極まで行ってイヌイットと暮らしていたことがあるんだ。そのとき、アイスプラネットを見に行こう、と友達になったイヌイットに言われてカヌーで北極海に出た。アイスプラネット。わかるだろう。氷の惑星だ。それが北極海に本当に浮かんでいたんだ。きれいだったよ。厳しい自然に生きている人だけが目にできる、もう一つの宇宙なんだな、と思ったよ。地上十階建てのビルぐらいの高さなんだ。そして、海の中の氷は、もっともっとでっかい。悠君にもいつか見てほしい。若いうちに勉強をたくさんして、いっぱい本を読んで、⑧いっぱいの『不思議アタマ』になって世界に出かけていくとおもしろいぞ。⑥世界は、楽しいこと、悲しいこと、美しいことで満ち満ちている。誰もが一生懸命生きている。それこそありえないほどだ。それを自分の目で確かめてほしいんだ。」

 手紙には、ぐうちゃんの力強い文字がぎっしりつまっていた。

 そして、ふうとうからは写真が二枚出てきた。一枚は人間の倍ぐらいあるでっかいナマズの写真。もう一枚は、北極の海に浮かぶ、見た者を幸せにするという氷の惑星の写真だった。

なお、問題は割愛する。俺が気になったのは、赤字の部分。日本だけにいるのと世界にいってきたここでいうぐうちゃんの話をお父さんがする場面なのだが、ここでさりげなく相対(的)という言葉を教えることにした。相対とは2つのものを見比べることによって、良い面が見えたり、悪い面が見えたりすることを指す。

…ちなみに高校生で、現代文を指導する際、必ずやることにしているのが、受ける志望のレベルに関係なく、東大の入試問題を必ず解くようにしているのだが、そのなかでの問題にこんなのがある。本文は割愛します。

問:自分の感情を相対化するとあるが、これはどういうことか説明せよ。(東京大学:過去問)

この問題を解くには、相対の意味を知らなければアウトである。以前にも、教科書だけでは力がつかないと国語の講師はついつい塾用教材や過去問などで対応する塾も多いと思うが、教科書をしっかり教えることができればそれだけで力がつくんじゃないかな。力量ある国語の講師ほど結構材料はなんでもよいなんていうことが多々ある。もしかしたら、そういう実力テストなんていうものを出したがる講師は設問を作れないんだと思う(小説の作題なんかは結構難しい。)そういう意味での追加措置といったこともある。ただ教科書指導だけでは実力がつかないというのは、もしかしたら指導の自信のなさの現れかもしれない。今度、S中の生徒に国語の先生の指導歴を聞いてみることにしよう。


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by masa717h | 2017-05-20 13:51 | 指導メモ書き

by masa717h